第57回 物性若手夏の学校 集中ゼミ
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▌ 集中ゼミ

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■ 集中ゼミとは?

集中ゼミでは、講師としてお招きした先生方に、ご自身の研究について3時間の講演をしていただきます。各分野の最新のトピックを時間をかけてわかりやすく学べることが集中ゼミの特徴です。

先生が研究されてきたトピックをそのご本人からお話いただくことで、通常の講義よりも更に「現場」の物理に近い、臨場感をともなった講演になるでしょう。また先生の講演を聞くだけでなく、学生側からの積極的な質問も歓迎していますので、活発な議論が起こることを期待しています。

■ 集中ゼミの形式

集中ゼミは4日目の午後に行われます。六つのゼミに別れて行われますので、アブストラクトやテキストなどを参考にして好きなゼミを選んでください。自分の専門分野についてさらに深い理解を求めるのもよし、自分の専門分野以外で新たに見聞を広めるもよしです。

集中ゼミでは講義と同様に座学形式で行われます。当日は長机と椅子が用意されています。


■ 招待講演講師一覧(敬称略、五十音順)
講師所属講義タイトル
有光敏彦筑波大学 数理物質科学研究科量子解放系を記述する正準演算子形式の理論体系とその応用― Non-Equilibrium Thermo Field Dynamicsへの誘い ―
石田憲二京都大学 理学研究科強相関電子系物質の核磁気共鳴
勝本信吾東京大学 物性研究所半導体太陽電池
島伸一郎兵庫県立大学 シミュレーション学研究科超水滴法による雲形成・降水の精密シミュレーションとその応用
島野亮東京大学大学院 理学系研究科テラヘルツ電磁波を用いた物性研究:半導体から強相関電子系まで
松本正和岡山大学大学院 自然科学研究科水の計算物理学とデータマイニング

■ 講義内容
● 量子解放系を記述する正準演算子形式の理論体系とその応用
― Non-Equilibrium Thermo Field Dynamicsへの誘い ―

有光敏彦 先生(筑波大学 数理物質科学研究科 教授)

量子力学では,状態ベクトルの時間発展を記述するSchroedinger方程式の時間推進演算子(エネルギー演算子Hamiltonian)を使って,演算子の時間発展を記述するHeisenberg方程式が書き下され(表示の変更を伴う),正準交換関係が保存する正準演算子形式の理論体系を構成している。量子解放系(散逸系)を記述する正準演算子形式の理論体系Non-Equilibrium Thermo Field Dynamics(NETFD)では,統計演算子(密度演算子)を真空状態のケット・ベクトルと見立て直すことにより,確率Liouville方程式の量子版を,確率Schroedinger方程式として得ることができる。その時間推進演算子(確率hat-Hamiltonianと呼ばれ,量子Brown運動を乱雑力演算子として含む)を使ってHeisenberg方程式(確率Heisenberg方程式と呼ばれる)を書き下すと量子系のLangevin方程式が得られる。乱雑力演算子に関して平均をとると,確率Schroedinger方程式は散逸Schroedinger方程式に,確率Heisenberg方程式は散逸Heisenberg方程式になる。得られた散逸Schroedinger方程式の時間推進演算子(hat-Hamiltonianと呼ばれる)は,散逸Heisenberg方程式のhat-Hamiltonianにもなっている(表示の変更を伴う)。確率的生成消滅演算子と散逸的生成消滅演算子の正準交換関係は何れも保存し,確率微分方程式系および散逸微分方程式系に対して,正準演算子形式の理論体系が構成されている。セミナーでは,NETFDの上記体系の構成からくりを詳しく解説する。その上で,時間が許す限り,NETFDならではの新しい自然認識や技巧,応用について紹介する。

● 世話人金澤による紹介文

自然界に現れる殆どの現象は多体問題です.多体問題を解くために人類は多くの努力を払ってきました.その一大分野が統計力学です.特に,非平衡系の統計力学は今もなお発展途中にあります.その中のアプローチの中でも,今回は量子確率過程を用いたアプローチを有光先生に解説をお願いいたしました.
古典系ではLangevin方程式のような確率過程的定式化が幅広く使われてきました.このアプローチを量子系に適応し,量子非平衡現象を理解することが今回の講演です.量子確率過程の第一人者である有光先生の講演を,是非ご聴講ください.

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● 強相関電子系物質の核磁気共鳴

石田憲二 先生(京都大学 理学研究科 教授)

現在、核磁気共鳴(NMR)実験 は物性研究の基礎的な測定の一つとなっている。NMRは原子核スピンの共鳴を通して電子スピンの情報を知る実験手法である。ここで重要となるのが、原子核スピン(I)と電子スピン(S)の相互作用(超微細相互作用:AIS)であるが、この相互作用は物理の基礎的な内容で支配され、最もシンプルな相互作用である。NMR測定では原子核位置での電子が作り出す磁場や、その低エネルギーのdynamicsを測定することが出来るため、磁性体や超伝導体の研究には特に有効である。
今回の集中ゼミでは、NMRの原理や基礎的な内容を概説した後、磁性体や超伝導体研究へのNMRの応用についてわかりやすく説明したい。また、NMR実験と中性子散乱やミュオンスピン回転等との関連性についても紹介する。
最後に、当研究グループで行っている鉄系超伝導体や強磁性超伝導体のNMR実験も紹介し、NMR実験から明らかとなったこれら超伝導体における磁性と超伝導の関連性ついて議論したい。

● 世話人佐々木による紹介文

NMR核磁気共鳴測定は静磁場中で原子核スピンのエネルギー分裂を利用して物質の磁気的性質を観測する測定方法であり、現在、物性物理の実験以外にも化学や医学の実験・応用など、様々な分野で利用されています。
石田先生はNMRを実験手法として主に様々な超伝導体について研究をしておられます。この集中ゼミではNMRの基礎から応用、そして実際の研究について講演していただきます。皆様この分野に少しでも興味があれば是非、石田先生の講演を聴講してください。

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● 半導体太陽電池

勝本信吾 先生(東京大学 物性研究所 教授)

太陽電池の研究は,半導体の工業応用研究の中でも常に生産や実社会での使用状況ということを念頭に置いて進めなければならない,やや特異なものである(どこが「特異」なのかはゼミ中で明らかにしたい)。ある意味,熱力学から経済,政治力学までを視野に入れながら進む,ちょっと猥雑で,取りようによっては極めて刺激的な研究領域である。乱雑に並ぶ様々な試みや実験結果にどのような物理的見通しを立てていくのか,応用研究の難しさ,面白さ,痛痒さを紹介したいと考えている。

● 世話人関口による紹介文

半導体を舞台とした電子の振る舞いは物性物理の一つの主要な研究テーマですが、技術応用という側面で見ると、現在のエレクトロニクスの基礎となっているのは敢えて言う必要はないでしょう。
その中でも太陽電池は現代社会が抱えるエネルギー問題に非常に分かりやすい形で貢献しうる技術です。
勝本先生は量子ドットなどの半導体微細構造を用いた電子・スピン物性の研究がご専門ですが、今回は太陽電池をテーマにご講演していただきます。その基礎となる物理から技術的側面、また実際の応用に向けた様々な課題など、分野を「縦」に越えたお話を聞ける機会と考えておりますので、興味のある方は気軽に参加してください。

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● 超水滴法による雲形成・降水の精密シミュレーションとその応用

島伸一郎 先生(兵庫県立大学 シミュレーション学研究科 准教授)

地球の気候システムにおいて雲は極めて重要な役割を果たしており, 日々の気象現象や, 気候変動の研究を進める上で, 雲をどのように予測モデルに取り込むのかは大きな課題である. 例えば, 温暖化に対する人間活動の影響をIPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) が評価しているが, 雲の役割はその量や光学的特性, 高度などによって変化するため,温暖化を促進するのか抑制するのかさえ明確には理解されていない. このため, 雲微物理過程を定量的に評価できる数値モデルを開発する努力が内外の研究機関で続けられている.
この様な背景のもと, 我々は超水滴法(Super-Droplet Method)と言う新しい雲微物理モデルの開発を行なった. 超水滴法はエアロゾル・雲粒・降水粒子の運動と変化を, 確率的な手法に基づく粒子法を使って統一的に計算する方法であり, 経験的なパラメタを使わずに原理的な物理法則に基づいて粒子系の状態変化を計算することができる. 特に,多種類の化学物質から成る凝結核が存在する場合など, より複雑な雲微物理過程の正確なシミュレーションを比較的速く行うのに適していると考えている. さらに, 雲に限らず, 一般に確率的に衝突併合を繰り返す離散粒子系に超水滴法は適用可能であり, 例えば噴霧燃焼や惑星形成のシミュレーションにも応用できるであろう.
本集中ゼミでは, 超水滴法の概要を解説した後, 観測と数値計算の比較結果など, 最近の研究成果を紹介する.

● 世話人甲谷による紹介文

気象予報は気温や大気などの他、人間の行動や大気中のエアロゾルなど様々な現象を考慮して作られなければなりません。島先生は、確率的な手法に基づく粒子法を使って統一的に計算し、新しい雲微物理モデルを用いて雲の生成から降水までのシミュレーションを行っています。さらにこのシミュレーションは一般に確率的に衝突併合を繰り返す離散粒子系であれば応用可能です。
本講演は、この概要、研究結果などをお話していただく予定です。

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● テラヘルツ電磁波を用いた物性研究
:半導体から強相関電子系まで

島野亮 先生(東京大学大学院 理学系研究科 准教授)

テラヘルツ(THz)電磁波とは文字通り、周波数がテラ(1012)ヘルツの領域にある電磁波のことであり電波と光波の狭間に位置している。この周波数帯はこれまで光源や検出器の制約から電磁波に残された「秘境」であった。近年、THz時間領域分光法と呼ばれるレーザー分光法によってこの未開拓のエネルギー領域の「光」物性研究が飛躍的に進歩している。例えば、強磁場下にある半導体界面の二次元電子系で生じる量子ホール効果ではランダウ量子化が必要条件になるが、ランダウ準位間遷移はTHz帯になる。最近、このランダウ準位間遷移が生じるような「光」周波数領域でも量子ホール効果が観測された(光学量子ホール効果)。半導体の励起子物性は光物性の中心課題の一つである。THz帯にある励起子内部遷移(1s-np遷移)の観測を通して、長年未解明であった励起子モット転移と呼ばれる電子正孔系の金属絶縁体転移が解明されつつある。BCS超伝導体の超伝導ギャップや、有機導体のスピン密度波ギャップはちょうどTHz帯にある。これら準粒子ギャップの直接観測を通して、光励起後の秩序相変化のダイナミクスを超高速の時間領域で調べることが可能になってきた。反強磁性帯の磁気励起(マグノン)がTHz帯にあることは古くから知られているが、最近、光(THz波)の電場成分で励起されるマグノン(エレクトロマグノン)が マルチフェロイック螺旋磁性体で観測され、その共鳴で非相反方向二色性が増大するなど、興味深い光学現象が続々と見つかっている。
本集中ゼミでは、これらの最近のトピックスを中心にTHz電磁波を用いた物性研究を紹介する。

● 世話人浅井による紹介文

みなさん、テラヘルツ電磁波をご存知でしょうか。
テラヘルツ電磁波(1テラ=1兆、以下THz波)とは、赤外線(光)とミリ波(電波)の中間に位置する周波数1THz(波長300μm)周辺の電磁波のことを指します。
このTHz波領域には、固体や気体の種々の励起(フォノン、励起子、プラズモン、超伝導エネルギーギャップ、分子間振動、スピンなど)に関係する物理現象が存在します。近年このTHz波の発生、検出の高効率かが進み、各種材料の分析・検査への応用を見越した基礎・応用研究が盛んに行われています。
今回講演してくださる島野先生は、特に光を用いた固体中の多体の量子現象、光励起状態における電子相関や相転移のダイナミクスの研究をされています。
本講演ではテラヘルツ波の光物性についてお話していただきます。対象とする物理現象として、励起子、プラズモン、超伝導、スピン密度波、反強磁性マグノン、 エレクトロマグノン、光学量子ホール効果、などを予定しております。このように様々な物理現象を扱っていただく予定なので、光物性以外の方でも楽しめる内容となっていると思いますので、多くの方々の参加と活発な議論を心待ちにしています!

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● 水の計算物理学とデータマイニング

松本正和 先生(岡山大学大学院 自然科学研究科 准教授)

ついにスーパーコンピューター京が稼動し、文字通りケタ違いの物性シミュレーションが可能となった。今年の年末頃には、その巨大なストレージをデータが埋めはじめていることだろう。次には、溢れるデータをどうやって解析するかが問題になるはずだ。
データが溢れる事態は、シミュレーションに限ったことではない。天文学でも分子生物学でも、機械がデータを生み続けている。計算規模が小さいうちは、グラフや可視化の工夫で、ある程度現象を把握することができた。人間の「気付き」の能力はあなどれない。また、近距離の問題にしか注意を払っていなかったからこそ、小規模の計算で事足りた。
しかし、大規模な系でしか生じない何かをみつけたいからこそ、大規模な計算をするわけで、小規模の系で培った手法や、人間の気付きだけに頼っていたのでは、真に面白い、新奇な現象を見逃がす可能性は高い。
溢れるデータの中から、価値のあるデータを見付ける技術をデータマイニングと呼ぶ。電動アシスト自転車が人の行動範囲を拡げるのと同様、データマイニングは、人間の「気付き」をアシストし、知的探索の範囲を拡げる。人間の直感に頼らずに、データの次元を縮約したり、相関や因果や突発的な変化を見付けだす、うまい方法がないものか、というのが、この集中ゼミのテーマである。
幸か不幸か、決定打となる手法はまだ見付かっていないので、我々研究者も失業しないで済んでいるし、これから挑戦する人にとっては、雑多な知識やアイデアが生かせる面白い分野である。ゼミでは、水の物性の研究を題材として、どんな現象が見られるか、どんなデータ解析手法が使えるかを各種紹介するので、自分の研究に使えそうなアイデアをマイニングしてほしい。

● 世話人冨士による紹介文

大量のデータの中から有用な情報を抽出することをデータマイニングといいます。計算機の能力が発達した現在、大規模シミュレーションを卓上でも行うことが可能となりました。昨年は京コンピューターがスパコン性能ランキング世界第1位となり、ものづくりや医療、気象観測など、さまざまな分野で活用が期待されています。今、得られた大量のデータの中からどのようにデータマイニングをおこなうかが重要な課題の一つです。
松本正和先生は水などのシンプルな構造を持つ物質のネットワーク性に着目し、データマイニング的手法を用いたアプローチでその物性に迫る研究をされています。本講演では水の物性とそれに迫るデータ解析手法についてお話いただく予定です。
データ解析の手法は水に限らず様々な対象への応用が可能です。また水の物性は生命現象などの他の現象に密接な関わりを持っています。興味のある方は是非ご参加ください。

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