アメーバの行動にみる賢さとそれをもたらすダイナミクス
中垣 俊之 先生
北海道大学 電子科学研究所 電子機能素子部門
分野:非平衡パターン
概要
単細胞生物である粘菌(モジホコリ)の情報処理機能についてお話します。
粘菌の変形体は巨大なアメーバ様生物で原形質とよばれるネバネバした物質からなっています。
そのネバネバの中には核やミトコンドリアなどのオルガネラをはじめ
アクチンミオシンなどの収縮タンパク質や各種代謝酵素系などが含まれてます。
脳や神経系はありませんから、変形体の情報処理はこのネバネバの
物性からもたらされると考えられます。私たちはこのような考えにたって、
物質レベルから生き物の賢さを研究したいと思っております。
主に二つの問題、
- 変形体の賢さはどれほどか?
- その賢さをもたらすダイナミクスはどのようなものか?
について私たちの見解を述べたいと思います。
細胞は最もシンプルな生きた系ですから、
基本的である分、生き物としての根源的な性質を調べるには適当でしょう。
以下の三つのトピックスを中心に取り上げる予定です。
- 迷路などの幾何学的なパズルを解く
- 周期的な環境変動を学習して思い出す
- 個性や逡巡とおぼしき行動を示す
それぞれの行動をもたらす現象論的な数理モデル(微分方程式モデル)を提案します。
世話人からのメッセージ
中垣俊之先生は、真性粘菌が迷路の最短距離を見つけ出す、という研究において2008年イグノーベル賞(認知科学賞)を受賞されました。
今回の講義では、「粘菌って何?」というレベルから、数理モデルなどの数学・物理の最先端の話題までお話しして頂く予定です。粘菌の賢さを議論することで、あなた自身も賢くなること請け合いです。このサブゼミが、物理・生物・数学といった壁を取っ払って、活発な議論の場になれば幸いです。また、イグノーベル賞授賞式の裏話なども聞けるかもしれませんので、お楽しみに。