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分子の世界の渋滞学 ―ガラス転移の物理―

宮崎 州正 先生

筑波大学 大学院数理物質科学研究科 物理学専攻 凝縮系理論 准教授

分野:ガラス転移

概要

ガラスとは、分子がランダムな空間配置を保ったまま、運動が凍結した状態のことである。これをガラスの定義とすると、窓ガラスに限らず、我々の身の回りには、ガラス的物質が満ち溢れていることに気がつく。ペンキや泥、豆腐やゼリー、さらには砂の山も一種のガラスだ。ランダムさを上手に制御して機能する我々生き物も、ある意味ガラス的物質と言ってよいかもしれない。

この運動の凍結は、液層にある物質の温度や圧力を急激に下げる、または上げる事により引き起こされる。これをガラス転移と言う。ガラス転移は所謂結晶化ではない。見かけ上、相転移的な特徴も結晶的長距離秩序も示さないまま、特徴的な時間スケールだけが巨視的に発散する、非常に不思議な現象である。ガラス転移は、いわば分子達が交通渋滞を起こした状態なのだ。

では、なぜ交通渋滞が起こるのか。そもそも、ガラス転移は純粋に動力学的な転移なのか。それとも背後に我々の目に見えない熱力学的転移が隠れているのだろうか。この分子の世界の交通渋滞を引き起こす張本人を探して、現在も、活発に研究が行われている。

本セミナーでは、ガラス転移の物理学の基礎と面白さを紹介した後、理論研究の最新の成果を紹介する予定である。

世話人からのメッセージ

ガラス状態とは、分子が空間にランダムに配置された状態で運動が凍結した状態のことです。そのように考えると、ガラス状態の物質というのは窓ガラスのようなものだけでなく、プラスチックやゼリー、泥などその他様々なものがガラス状態であると言えます。

ガラス状態に転移する際に、特徴的な時間スケールが巨視的に発散するのですが、その詳しい振る舞いというのはまだまだよくわかっておらず、様々な角度から活発に研究が行われています。先生の研究スタンスは、 1.ガラス転移の理論を発展させる 2.ガラス転移の研究で開発された理論を、他のソフトマターや非平衡状態に応用する という2つの視点から行っています。今回はガラス転移の基礎的な話と、最新の研究成果を紹介してくださいます。

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