54回 物性若手夏の学校 2009 トップはじめにプログラム会場案内参加費用各種データ協賛・後援スタッフ紹介

中性子散乱の最前線

社本 真一 先生

日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究部門 中性子物質科学研究ユニット ユニット長

分野:中性子散乱実験

概要

中性子は磁気モーメントをもつが,電荷を持たない粒子である.

室温の水などで速度を減速された中性子は,その波長とともに運動量とエネルギーの関係において,物質内の電子スピンや格子の素励起を調べるのに非常に適している.またパルス中性子では広い逆格子空間の散乱パターンを飛行時間法により効率よく測定できることから,その散乱パターンをフーリエ変換することで実空間での対相関関数を正確に求めることができる.その特徴を利用して,周期構造をもたないアモルファスの構造から結晶性の物質の構造まで,幅広く物質の構造解析に用いられる.さらにその中間に存在する乱れた結晶性物質やナノ物質の構造解析も可能である.

ここではパルス中性子を利用した構造およびそのダイナミクスの研究について,これまでの日本での先駆的な研究や放射光X線回折との比較を含めて概要を紹介しながら,J-PARC 物質・生命科学実験施設と研究用原子炉施設JRR-3の散乱装置,そして一部ではあるが特徴ある海外の中性子散乱施設の装置もあわせて紹介する.

さらに最近の研究でわかってきた実空間の構造の乱れ,およびその物性とのかかわりについて,平均構造との違いを含めてわかりやすく紹介したい.

世話人からのメッセージ

「中性子散乱は磁気構造を見るもの」と思ってる方はいませんか?確かに磁気構造決定のための強力なプローブですが、中性子の使い道はそれだけではありません。線源の建設と運営にかかるコストを実験成果で回収するかのように、非弾性・準弾性・散漫散乱などのスペクトルから様々な情報を引き出す解析手法が存在します。社本先生は、すでに稼働を始めた大強度陽子加速器施設J-PARCにて中性子散乱を用いた物質科学研究を統括してらっしゃいます。

講義では中性子散乱の理論的基礎から各手法の概要、最新の動向などをお話しして頂く予定です。J-PARCという世界最高レベルのパルス中性子源によってこれまで考えられなかった実験データが得られるだろうと言われている今、これは中性子散乱について学ぶ絶好のチャンスです!今まで縁がなかった方こそ是非!

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