54回 物性若手夏の学校 2009 トップはじめにプログラム会場案内参加費用各種データ協賛・後援スタッフ紹介

量子輸送現象における幾何学的位相の効果

小野田 勝 先生

秋田大学 工学資源学部 電気電子工学科 准教授

分野:ベリー位相、スピンホール効果

概要

固体中電子の量子性は従来から広く利用されてきましたが、近年の物質設計および微細加工技術のいっそうの進歩にともない、量子効果をよりあらわな形で利用したデバイス開発が急速に進展しています。例えば、量子力学的自由度である電子スピンの電子工学的な利用を目指した分野が発展し、スピントロニクスと呼ばれる一大分野を形成しています。

このような状況より、固体中電子波の利用には、エネルギー・バンド構造に見られる分散関係に加え、スピン自由度を考慮した位相情報に関する理解が重要であると考えられます。また、スピン自由度に付随して幾何学的位相と呼ばれる位相が現れることが知られており、特にスピンと軌道運動の結合が無視できない系においては輸送現象における顕著な効果として現れることが予想されます。このような効果についての理解を深めていくことで、固体中電子系の新しい機能の開拓につながるかもしれません。また、幾何学的位相という視点から眺めてみることで、電子系以外への応用も自然と視野に入ってきます。


この講義では量子輸送現象における幾何学的位相の効果を研究する上での手法や研究例について紹介します。まず基本事項について厳密な例をもとに学習した後、固体中電子波などの周期構造中の波であるBloch波における幾何学的位相の一般論と応用例について解説します。幾何学的Hall効果としての内因的な異常Hall効果やスピンHall効果、その光学系における応用例、またそれぞれの効果の量子化版などについても触れる予定です。

世話人からのメッセージ

近年スピントロニクスと呼ばれるスピン自由度の工学的利用を目指した技術が注目を受けており、これによりスピン自由度を考慮したときの電子の理解を深めることが必要となってきています。このような背景の中で、小野田先生はスピン自由度を考慮した時に現れる幾何学的位相と呼ばれるものを中心に据え、異常ホール効果やスピンホール効果などの研究をなさっている方です。

今講義では皆さんと一緒に幾何学的位相と関連する様々な物性を基礎から最新の研究まで学んでいきたいと考えております。興味を持った方はぜひ聴きに来てください。

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