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放射光X線を利用した構造物性研究

村上 洋一 先生

高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 教授

分野:強相関、X線

概要

放射光を利用した様々な実験は、物理学分野、特に物性物理学分野 の発展に重要な役割を果たしてきた。放射光実験において利用され る光のエネルギー領域は、数百keVのハードX線から1eV 以下の赤外光までの6桁以上にも広がっており、その実験手法 は多岐に及んでいる。

本講義では主にX線を利用した構造物性研究 について解説する.X線回折・散乱実験の基礎から始め,強相関電 子系に関する研究の流れを概観した後,重要な放射光X線回折・散 乱実験を紹介する.

これらの実験が,電子の創る物理的世界像を構 築するときに,どのようにキーとなる情報を提供してきたかを述べ ていきたい。特に,強い電子相関効果によって生じる電子自由度 (電荷・スピン・軌道)の秩序状態とその揺らぎについて述べ,そ れらが系の物性発現において果たす役割を考える.また,共鳴X線 散乱や極限条件下でのX線回折実験など,電子自由度秩序を観測す る有力な実験手法の最近の発展についても詳述する.

講義の概要は 下記のものを予定している.

  1. 構造物性研究とは何か ―回折・散乱実験の基礎と物質の対称性―
  2. 放射光X線を利用した代表的な実験的研究
  3. 強相関電子系における構造物性研究 ―電子自由度秩序構造の観測―

HP: http://calaf.phys.tohoku.ac.jp/

世話人からのメッセージ

村上先生は放射光、特にX線を用いた物質の構造解析・物性の解明を中心に最先端の研究をされています。

講義はX線を用いた物質の構造解析の基礎理論から、電子相関の強い系で重要となる電荷・スピン・軌道の自由度が絡んだ多彩な物性や、それらの秩序状態などを解明する実験手法及び原理、また実際の物質にそれらの実験手法を適用した最先端の研究を中心に講義して頂きたいと思っています。

特に共鳴X線散乱を用いたペロブスカイト型マンガン酸化物の軌道秩序の観測は、先生の論文を初めて読んだ際非常に感動したことを覚えています。X線の奥深さを是非、多くの皆さんと一緒に勉強していきたいと考えています。

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