53rd Condensed Matter Physics Summer School 2008

結晶成長とパターン形成

上羽牧夫教授
名古屋大学 大学院理学研究科 物質理学専攻

概要

結晶中では膨大な数の原子が規則的に配列している.この状態がエネルギーを最小にすることは自明かもしれないが, 10の23乗個のレンガを積み重ねることを想像すると,このような状態がなぜ自然に実現できるのかは神秘的とも言える. この過程を研究するのが結晶成長の物理である.

この講義ではまず結晶成長過程の荒筋を非平衡統計力学の具体例として解説する. そのあと,結晶化の過程で起こる様々な非平衡パターン形成とその機構を, 顕微技術の進歩によって発展が著しい結晶表面でのナノ,マイクロサイズの現象を中心に紹介する. とくに結晶表面で原子ステップが作り出す表面モルフォロジーでのメカニズムの多様性と, 周期構造,カオス,フラクタルなどパターン形成の普遍性に焦点をあてる.

Tremendous number of atoms perfectly align in a crystal. Although there is no doubt that this is the lowest energy state,it is far from obvious whether it is possible to form such a state automatically for the atomic bricks. This mysterious mechanism is what physics of crystal growth pursues.

In the lecture, I give a brief summary of the crystal growth process as an example of nonequilibrium statistical mechanics. Then I introduce various nonequilibrium pattern formation phenomena during crystallization and their mechanisms. Examples are mainly taken from surface phenomena at a nano or a micrometer size, where intense study has been performed with modern microscopy. The surface morphology produced by atomic steps during growth will be discussed. I emphasize variety of the mechanism and universality of the patterns such as periodic structures, chaos and fractals.

世話人からのメッセージ

冬の空から舞い落ちる雪の結晶は、六回対称の規則正しい構造となっていることはご存じだと思います。 あのような美しいパターンが自然に形成されるのは神秘的と感じませんか? 雪の結晶は、非平衡状態で見られるパターン形成、結晶成長の物理の代表例ともいえます。

今回の講義は結晶成長の成長過程を非平衡統計力学の具体例としてお話していただけます。 非平衡状態が作り出す結晶化の過程や周期構造,カオス,フラクタルなど様々な物理のエッセンスが盛りだくさん。 結晶化の中で起こる様々な物理現象を垣間見てみませんか?