竹谷純一 准教授
大阪大学 大学院理学研究科 化学専攻
銅や銀など電子伝導が良好な固体が、一般に熱伝導性にも優れているのは、
格子の振動(フォノン)のほかに電子の液体(フェルミ液体)が優れた熱伝導媒体になっているからです。
多くの電子状態が縮退しているフェルミ液体では、エントロピーが大きく、かつ良好な伝導性のために拡散しやすいことが、
エントロピーの流れ即ち熱の伝導が大きい原因であると理解することができます。
低次元磁性体でも量子ゆらぎが大きいために 低温でも秩序状態に転移しない“スピンの量子液体”の状態では、
同じ理由によって、大きな熱伝導が現れることを、本セミナーで紹介します。
銅原子に局在したS=1/2のスピンが一次元的に配列したCuGeO3や、
銅酸化物超伝導体の母物質におけるS=1/2スピンの二次元ネットワークにおけるスピンの熱伝導を測定した実験の解説を中心に、
関連する低次元電子系の電子輸送現象についてもお話します。
スピンが熱を運ぶってご存知でしたか?銅の様に、電子伝導が良好な固体が、一般に熱伝導性にも優れているのは、
電子とフォノンが優れた熱伝導媒体になっているからです。そして、スピンも優れた熱伝導媒体になるのです。
熱伝導の研究をなさっていた竹谷先生に、『スピンによる熱伝導』について紹介して頂きます。
多くの電子状態が縮退しているフェルミ液体では、エントロピーが大きく、かつ良好な伝導性のために拡散しやすいことが、
熱伝導率が大きい原因であると理解できます。今回お話して頂くのは、低次元磁性体では量子ゆらぎが大きいため、
低温でも秩序状態に転移しない“スピンの量子液体”の状態になり、同じ理由によって大きな熱伝導が現れる、という内容です。
『スピンの性質』に少しでも興味がある人であれば、楽しく話を聞けると思います。是非この機会に、熱の伝わり方を学びませんか?