松山明彦 准教授
九州工業大学 情報工学部 生命情報工学科
ソフトマターとは,単純液体や硬い個体として分類できない様々な柔らかい物質の総称である。
このような系として,液晶,高分子,ゲル,生体膜,コロイド分散系,界面活性剤溶液,タンパク質溶液などがある。
ソフトマターで構成される多くの物質は,並進や配向に対する対称性の破れをともなった液晶状態をもつ。
サブゼミの前半では,液晶状態を記述するための統計物理入門として,ネマチック液晶相のオンサガー理論と弾性理論を紹介する。
エントロピーが引き起こす相転移とはなにか?配向場とは何か?を理解していただきたい。
後半では,液晶分子と高分子の混合系や,液晶分子とコロイド粒子の混合系などの液晶複合系の相分離やそのダイナミクスについて最近の研究について紹介する。
配向場と濃度ゆらぎの競合による新しい相分離現象について紹介する。
ソフトマターの研究は統計力学的手法の宝庫である。このサブゼミをきっかけとして多くの方に興味を持って戴ければ幸いである。
Soft matter systems include polymer solutions, liquid crystals, gels, biological membranes, colloidal suspensions, protein solutions, surfactant solutions etc. Most of soft matter forms liquid crystalline states which have spontaneous broken symmetries of translational and orientational symmetries. In this sub-seminar, two basic theories; Onsager theory and Elastic theory, will be explained for understanding nematic liquid crystals in soft matter. Using these theories, recent theoretical studies related to liquid crystalline composites will be introduced in the latter half of the seminar. We will discuss phase separations and dynamics of polymer dispersed liquid crystals and liquid crystal colloids.
ソフトマターの複合系は工業的に必要で、例えば化粧品などは界 面活性剤分子と様々なソフトマターの複合系でつくられ、
まさにリオトロピック液晶の物理・化学的研究が重要です。
今回サブゼミの講師をして頂ける松山先生は、液晶やゲルや高分子などの様なソフトマターの相転移の理論を研究されている先生です。
先生の講義では、最新の研究の一つである液晶分子と高分子の複合系や、液晶分子とコロイド粒子の複合系についてのお話を聞くことができます。
ソフトマターについてあまり詳しくないという方でも、講義の前半では液晶の複合系の自由エネルギーを扱う上で重要となっている、
オンサーガー理論と弾性理論についてわかりやすく説明して頂けると思います。
ですから、ソフトマターの統計力学について少しでも興味がある方は是非先生の講義に参加してみて下さい。
また、ソフトマターを研究テーマにしていない方も、先生が研究されている統計力学的手法はきっと役に立つと思います。