小林晃人 特任講師
名古屋大学 高等研究院
周期性を持った固体中の電子状態はBlochバンドで記述される。
しかし磁場がかかった場合、特定のBlochバンドのみでベクトルポテンシャルを導入して磁場の影響を考察することは一般にはできない。
なぜならベクトルポテンシャルはBloch波動関数を変化させバンド間行列要素を持つからである。
このベクトルポテンシャルの効果は「バンド間磁場効果」と呼ばれ、ビスマスの巨大軌道反磁性など驚くべき物性を生み出すことが知られている。
サブゼミの前半では固体中の電子をBloch表示ではなくLuttinger-Kohn表示で記述し、
これによりバンド間磁場効果が厳密に導入されることをできる限り平易に解説する。
後半では分子性導体α-(BEDT-TTF)2I3のゼロギャップ状態を紹介したい。
ここでは「傾斜した」質量ゼロのディラック粒子がバンド間磁場効果により特異なホール効果を生み出している。
物質中のDirac粒子。
1928年Diracは相対論的量子力学に従う電子の理論を構築しました。
粒子の質量が0の場合のDirac方程式はWeyl方程式と呼ばれ,粒子の運動量とエネルギーが比例関係にあります。
一般に固体中の電子の運動量とエネルギーの分散関係は様々な相互作用や系の持つ対称性により複雑になりますが,
最近質量0のDirac粒子と同じギャップレスな分散関係:Dirac coneに従う電子が有機導体(BEDT-TTF)2I3において見出されました。
今回の夏の学校で名古屋大学高等研究院の小林晃人特任講師を招待することが出来ました。
小林晃人特任講師はギャップレス半導体(BEDT-TTF)2I3の理論研究でとても有名な方です。
理論的にはもちろん、工業的にも注目されている物質中で実現したmasslessの粒子の物理に興味がある方はぜひご参加ください。