小形正男 教授
東京大学 大学院理学系研究科 物理学専攻
高温超伝導体の発見以来、クーロン相互作用によって激しく相関を持ちつつ運動する強相関電子系というものがいろいろと調べられてきた。
その全貌は未だ明らかではないが、一体のDrudeモデルやバンド計算、およびそれを基礎としたBCS超伝導とは異なった、
新たな一分野を形成すると期待されている。
この講義では、基礎的なところから始めて最近までに分かってきたことを、理論を中心に考える予定である。
とくに1次元、2次元系の低次元電子系や幾何学的フラストレーションがある場合に着目する。
電子どうしがCoulomb相互作用によって強く相関した強相関電子系と呼ばれる物質群では,電荷・スピン・軌道・結晶格子などの自由度が複雑に絡み合い,
多彩で興味深い物性を示します.電子相関を無視したバンド理論では説明できないMott転移,従来の常識を覆した高温超伝導など,多くの研究者が魅了され,
研究が進められてきましたが,未だ完全に解明されたとは言えません.
この度講義をお願いした小形正男先生は,この難しい問題に主に数値的なアプローチで取り組んでおられる先生です.
数ある自由度の中から系の次元性や幾何学的フラストレーションといった結晶格子の幾何学に焦点を当て,
それによって起こる新しい物性について,強相関電子系の基礎からお話しして頂きます.
1023個もの電子を相手に物性理論の研究者はどのようにして立ち向かっているのか,先生の講義を聴いてその一端を学んで頂ければと思います.