守友浩 教授
筑波大学 大学院数理物質科学研究科 物理学専攻
Materials Scienceの研究を進める上で、対象物質の格子構造を知ることは大変重要である。
特に、遷移金属酸化物や遷移金属錯体における、電子のトランスファー積分や交換相互作用の符号や大きさ、
d軌道の安定性、といった物理量は、遷移金属と配位子との結合長や結合角、遷移金属の配位環境に強く支配されている。
本講義では、構造物性研究により深く親しんでもらい、使えるX線回折・中性子回折を学んでもらいことを目的としている。
さらに、構造と物性との密接な関係や、第三世代放射光X線光源(SPring-8)における最先端の最先端構造研究の紹介をする。
講義の前半では、構造解析の基盤知識である、結晶構造の概説とX線回折/中性子回折の基礎を講義する。
さらに、使えるX線回折・中性子回折を目指して、Rietveld解析の実際を紹介する。ノートPCを持参してもらえれば、
Rietan2000 [1]をインストールして粉末構造解析を体験できる。
講義の後半では、これまでの研究を紹介しながら、構造と物性との密接な関係を議論する。
特に、中性子構造解析や高輝度放射光X線を利用した高圧下構造解析による、
構造パラメターと物性との関係を議論することが可能となった。
さらに、SPring-8で行っている光照射下における動的相転移状態の構造決定や時間分解X線回折についても言及する。
[1] Rietan2000は泉先生が開発した構造解析プログラムである。
詳細は、こちらを参照。
The information of the lattice structure is indispensable for the precise argument of the material properties. Especially, in transition metal oxides and transition metal complex, the transfer integral, the exchange interaction, and the orbital occupation are governed by the bond distance and the bond angle between the transition metal and ligand, and the ligand environment, respectively. In this lecture, I hope that the students who take the course become familiar with the X-ray/neutron diffraction measurements, and can utilize the technique in their future investigation. In addition, the close interrelation between the structure and the physical properties as well as the research frontier of the structural investigation at the 3rd synchrotron radiation X-ray facility, SPring-8, Japan.
In the former part of the lecture, concept of the crystal structure and the basis of the X-ray/neutron diffraction, which are the fundamental knowledge of the structural analysis, are explained. Then, the actual procedure of the Rietveld analysis is introduced with use of the Rietan200 program developed by Dr. Izumi. If you want to experience the Rietveld analysis, bring your note PC to the classroom.
In the latter part, taking the ferromagnetic and charge-ordering transitions of doped manganites as example, the close interrelation between the structure and physical properties are explained. These investigations were performed at the neutron scattering facility, JRR-3M (HERMES), Japan and synchrotron radiation X-ray facility, SPring-8 (BL10XU). Furthermore, I plan to introduce the determination of the structures before and after the dynamically phase transition as well as the time-resolved X-ray diffraction performed at SPring-8 (BL40XU).
ある未知の物質の性質を調べていくためには、まずその物質の結晶構造を理解することが重要です。
この結晶構造は、結晶内で起こる様々な作用が複雑に絡み合って形成されています。
X線回折や中性子回折といった実験手法を用いることで、結晶内の様々な状態や結晶構造そのものを特定できます。
さらに、大型の放射光施設を用いることでより詳細な研究を行うことも出来ます。
守友先生は、強相関電子系を研究対象に様々な環境下での物性研究を行っています。
今回の講義は物性研究の基礎とも言える構造解析から、
第三世代放射光施設(SPring-8)での最先端の研究まで広範囲にわたって面白く興味深い話を聞けると思います。
物性研究に興味がある方は是非一緒に守友先生の講義を聞きましょう!!