53rd Condensed Matter Physics Summer School 2008

企業内研究の在り方 —研究の面白さと難しさについて—

北川 功

1998年大阪大学 大学院基礎工学研究科 博士課程修了
同年(株)日立製作所入社 日立製作所 基礎研究所 研究員
半導体デバイス特性の研究、NMR装置の開発を経て、
現在第一原理計算に基づく、材料探索・デバイス研究に従事

メッセージ

皆さんは研究室で本格的な研究活動をスタートされていることと思います。「その研究のX年後」を意識されているでしょうか?企業での研究では「X年後には○○を実現する。」といったゴールが存在します。また、大半の研究は一人で閉じるものではなく、プロジェクトやチームで進められます。多くの人と関わることなしで進めることはありません。

一般的な企業では研究活動は直接の利益を生みません。なぜなら、研究結果を直接販売することはほとんどないからです。また、研究にはお金がかかります。しかし、多くの企業では研究に対する投資がなされており、投資規模は年々増加傾向にあります。それは、研究は企業活動の種となる知識や技術を生み出す源泉であると認識されているからです。

企業での研究において大切なことの一つに「時(タイミング)」が挙げられます。得られた研究成果を価値のある形で社会に提示していくためには、社会の形態やニーズに合った形で提示する必要があります。そのために「X年後には○○を実現する。」といった目標設定が大切になります。また、コミュニケーションも重要です。研究成果を活かすためには、人に研究の重要性やインパクトを説明し、一緒に活動してもらう必要があります。

当日は、研究戦略と企業活動の関係について触れたいと思います。そして、私自身の経験も含め仕事の面白さなどについても述べたいと思います。