53rd Condensed Matter Physics Summer School 2008

産総研における研究開発と研究者のキャリア設計

川本 徹

1992年大阪大学 基礎工学部 卒業
1994年大阪大学 大学院基礎工学研究科 修士課程修了
1997年大阪大学 大学院基礎工学研究科 博士課程修了
研究テーマ「分子磁性体に関する研究」
同年国立電子技術総合研究所入所 研究員
2001年産業技術総合研究所 ナノテクノロジー研究部門 研究員(組織改組のため)
磁性・光物性・電気伝導の理論的研究を経て、
現在エレクトロクロミック材料を利用した調光/表示装置の実験的・理論的研究
産総研人材開発部に所属し若手研究者のキャリア開発支援にも携わる

メッセージ

講演では、大学とも企業とも違った、独法である「産総研」での研究のあり方についてまずお話しします。産総研をはじめとする独法はひとくくりにできるものではなく、機関ごとにそのミッションは大きく異なっています。産総研は、基礎研究から製品化研究までを広く視野に入れ、特に基礎から製品化への橋渡しを重視した研究を推進することで、基礎研究で得られた知見を効率よく製品化に結びつけることを目指しています。皆さんが在籍しておられる大学と産総研の大きな違いとしては、「ミッションが比較的明確」「組織設計が柔軟」「学生が少ない」などが挙げられるかと思います。これら「大学と産総研の違い」に注目して、当日は「産総研における研究推進」をご紹介したいと思います。

また、私なりの研究者のキャリア設計についてもお話します。自身のキャリアを考える際に最も重要なことは、「『時が経っても変化しないこと』を明確に把握する」ことだと思います。例えば、皆さんの研究環境は今後も劇的に変化していきます。大学も、私が在籍していた十数年前と現在では全く違っているでしょう。独法も同じく変化していますし、企業もバブル時と今では思想がかなり変わっています。研究環境だけではなく、自身の結婚や子育てなど、家族環境も変化しますし、自身の考え方でさえ10年たてばかなり変わります。一方、あなた方の中で変わらないものは何でしょうか?例えば信念のようなもので「これは死ぬまで変わらない」というものはありますか?そういうものを明確にできれば、自ずとキャリア設計はできるでしょう。講演ではそのあたりについて自身の経験を交えてお話しいたします。