集中ゼミ 2E
ゲージ・重力対応で探る非平衡系の物理学
中村 真 先生 🌐
中央大学
ゲージ・重力対応(AdS/CFT対応、ホログラフィー)とは、超弦理論により提案された理論的予想であり、一見全く異なる2つの理論が等価であることを主張する。
この対応の標準的な例においては、一方の理論は、d次元時空で定義された量子ゲージ理論であり、他方の理論は、より高次元の10次元時空中の古典的な超重力理論(一般相対性理論)である。
この対応関係の特徴は、ゲージ理論側の経路積分後の結果が、重力理論側の古典的計算で直接得られるということである。
ここでいう経路積分とは、量子力学的な期待値を求めるための経路積分のみならず、統計物理学的な状態和をとる経路積分をも含む。
このため、ゲージ理論で微視的理論を定義して重力理論に移ると、古典力学的計算により微視的理論のマクロな物理を抽出できる。
この対応関係の成立には系が熱平衡状態にあることを前提としない。
このため、微視的理論側が非平衡状態となるように境界条件を設定し、等価な境界条件のもとで対応する重力の古典論を解くと、その非平衡状態でのマクロな物理の情報や、物理量の期待値が得られることになる。
本講演では、このゲージ・重力対応をいくつかの非平衡定常状態の記述に応用し、輸送係数、揺動散逸関係式の振る舞いや、非平衡定常状態において発現する相転移と臨界現象について、これまでの研究を概観する予定である。