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第71回 物性若手夏の学校 Condensed Matter Physics Summer School

集中ゼミ 2C

カイラリティが拓く物性物理

戸川 欣彦 先生 🌐

大阪公立大学

電子がDNAなどのキラル分子を通過するとスピンの向きが進行方向に揃うという現象が報告された.

イスラエルのナーマンとアメリカのワルデックらが見つけたもので,キラル分子の構造の左右によってスピンが揃う向きが決まることからカイラリティ誘起スピン選択性(Chirality-Induced Spin Selectivity:CISS)と呼ばれている.

2011年に発表された論文では通過した電子の8割以上がスピン偏極するという高い偏極率が示された.

CISSは分子や結晶に幅広く見つかるキラル物質において普遍的に現れることが明らかになっている.

CISSの振る舞いを既存の物性物理学だけで理解するのは難しく,その原理解明が強く望まれている.

直感的にCISSを理解するにはキラル物質では電子やフォノンがカイラルに振舞いカイラルな応答を引き起こすという考え方に馴染むとよい.

そこでまず初めに物性物理におけるカイラリティの意味を論じる.

物質におけるカイラル項の物理的描像を踏まえたうえでCISS研究の紹介を始める.

その発見の経緯から研究の現状および論点を概観する.

これによりカイラリティに着目した物性研究,中でもCISS研究に興味ある初学者への手引きとしたい.