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第71回 物性若手夏の学校 Condensed Matter Physics Summer School

集中ゼミ 2A

冷却原子実験による量子シミュレーション

福原 武 先生

早稲田大学 🌐 / 理化学研究所 🌐

量子多体系の理解は、素粒子物理学から物性物理、さらには宇宙物理に至るまで、幅広いスケールで現れる多様な現象を統一的に捉える鍵となる。

一般に、複雑な物理現象に対しては、その中からエッセンスを抽出し、簡略化された物理モデルを構築することで理解を試みる。

しかしながら、そのようにして得られたモデルであっても、多数の粒子が相互作用する量子多体系は理論的に扱うことが困難な場合が多い。

例えば、強相関電子系の基本モデルとして知られるハバード模型は、銅酸化物高温超伝導体の本質を捉える最小模型の一つと考えられているが、大規模系におけるその性質は未だ十分には解明されていない。

ここで出番となるのが、冷却原子実験を用いた量子シミュレーションである。

光によって形成される周期ポテンシャル(光格子)中に原子気体を閉じ込めることで、ハバード模型に代表される格子模型を高い精度で実現することができる。

さらに、トンネリングや相互作用エネルギーといった系のパラメータを系統的かつ高精度に制御することで、量子相や量子現象を実験から探ることが可能となる。

本集中ゼミでは、冷却原子系の基礎を概観した後、光格子における量子多体系の物理について説明する。

あわせて、冷却原子系に特有の制御・測定手法についても紹介する。

特に、光格子中の原子気体を単一原子・単一格子レベルで観測・操作することを可能にする量子気体顕微鏡技術に焦点を当てる。

この技術により、従来の凝縮系実験ではアクセスが困難であった局所的な原子分布や相関といった物理量の直接観測が可能となっており、量子多体系研究の新たな展開が切り拓かれている。