集中ゼミ 1D
あわ・みずたまの誕生に潜む臨界現象: 決定論的偏微分方程式に対する繰り込み群理論とユニバーサリティクラス
奥村 剛 先生 🌐
お茶の水女子大学
ハチミツをスプーンですくってパンにのせたりチューブから垂らしたりすると、ハチミツは垂れ下がって大きく伸び、やがてハチミツの滴が生成される。
また、水道の蛇口をよくしめなかったときには、水滴が周期的にぽたぽたと生成される。
これらの日常現象は、流体の「分裂」や「ピンチオフ」あるいは「引きちぎれ」とも称され、ナビエストークス方程式を根底とする偏微分方程式の解析から深い理解が示されてきた。
なかでも、バブルの分裂は、その支配方程式が極めて単純であるにもかかわらず、深遠な数理構造があることが応用数学者たちによって解明されてきていた。
しかし、最近、本著者は、この驚くほど単純な式にさらに深遠な世界が潜んでいることを見出した。
いまから30年以上も前に数学者らが提唱していた決定論的偏微分方程式に対する繰り込み群理論をバブルの分裂の支配方程式に適用すると、臨界現象との深いレベルでの対比が浮かび上がってくるのである。
一方、繰り込み群理論とそこから派生してくるユニバーサリティクラスという概念は、物理学のあらゆる分野を理論的に牽引する現代物理学の支柱ともいえる。
しかし、そのしっかりしたレベルでの習得は、通常、大学院レベルの題材である。
そこで、本稿では、学部2年生程度の物理と数学の知識だけを仮定して、臨界現象とその繰り込み群理論について入門となる内容を含めたうえで、バブルの分裂と臨界現象の類似について解説する。