集中ゼミ 1B
非相反多体物理学
花井 亮 先生🌐
東京科学大学
熱平衡系の巨視的性質は、自由エネルギー最小化原理に従う。
このことは、粗視化された有効相互作用のうち、物理に寄与する成分が相反的なものに限られることを意味する。
一方、外部環境とエネルギーの流入・流出がある非平衡開放系ではその限りではなく、着目自由度だけを見ると、あたかも作用反作用の法則が破れたような非相反相互作用が一般に生じる。
実際、脳科学、生態系、生命科学、アクティブマター、化学反応、量子開放系など、非常に広い文脈で非相反相互作用は普遍的に現れる。
本講義では、非平衡開放系に固有のこのような非相反相互作用が多体系の秩序形成にどのような影響を与えるかを概説する。
熱平衡系の相転移現象を記述する一般論として成功を収めてきたランダウ理論を運動方程式に立脚した形に拡張することで、非相反性を強めると、静的状態から秩序パラメータ同士が「追いかけっこ」運動をし続ける時間依存相へと「非相反相転移」することを示す。
この転移点は、南部ゴールドストーンモードと緩和モードが合体する「臨界例外点」で特徴づけられ、固有モードの非直交性により通常の相転移より異常に大きな臨界揺らぎが発生する。
これは、非エルミート性が巨視的な揺らぎを増幅することに起因し、従来の熱平衡系の臨界現象と質的に異なる。
最後に、近年の進展と今後の展望を述べる。





