集中ゼミ 1A
量子多体系における条件付き相互情報量の数理
桑原 知剛 先生 🌐
理化学研究所
本講義では,量子多体系における条件付き相互情報量(conditional mutual information; CMI / quantum CMI)の数理的構造と物理的意味について概説する。
条件付き相互情報量は,多体系に現れる三者間相関や条件付き独立性を特徴づける量として極めて重要であり,量子情報理論・統計力学・量子多体論を結びつける中心的概念の一つとなっている。
講義前半では,まず古典系におけるCMIとMarkov network,Hammersley–Clifford定理との関係を整理し,その後,量子条件付き相互情報量(QCMI)の定義と基本性質を導入する。
特に,強劣加法性(strong subadditivity),Petz recovery map,Fawzi–Rennerの定理などを通して,「QCMIが小さいこと」が量子状態の回復可能性や近似的Markov性とどのように関係するかを説明する。
さらに後半では,量子版Hammersley–Clifford定理に関する未解決問題や,エンタングルメントHamiltonianの局所性とQCMIとの関係など,近年注目されている話題を取り上げる。
これらの問題が量子多体系の局所構造,熱平衡状態,エンタングルメントの空間構造を理解する上でなぜ本質的であるのかを議論し,現在どこまで理解が進んでいるのかを概説する。