講義 F
量子情報理論と有限長解析
林 正人 先生 🌐
名古屋大学
本稿は、量子系における符号化問題を有限長(有限回数・有限ブロック長)の枠組みで扱うための基礎をまとめる。
中心となる道具は量子仮説検定であり、仮説検定型の評価量(相対エントロピー、Rényi型ダイバージェンス等)が、有限長の上界・下界を与える統一的な言語となる。
本稿ではまず、量子状態・測定・CPTP写像による操作論的定式化を整理し、情報量としてのエントロピーや相互情報量の役割を導入する。
その上で、(i) 量子仮説検定と量子Stein型の漸近評価、(ii) 量子情報源圧縮(Schumacher圧縮)の有限長評価と漸近極限、(iii) 古典–量子通信路における符号化の有限長評価と容量への収束、を順に述べる。
線形代数と初等確率論を前提とし、証明は見通しを重視して要点に絞る。