観測理論と不確定性原理
東北大学大学院情報科学研究科 小澤 正直

あらゆる測定には,測定対象と測定装置の間の物理的相互作用が伴う. 観測理論は,物理的相互作用を分析して, あらゆる測定について成り立つ真理を追求することを目的とする. 二つの測定装置のモデルは,それらを入れ替えても測定値に関するあらゆる統計が変化しないとき,統計的同値であるという. 観測理論が扱う測定とは,測定装置のモデルの統計的同値類のことである. 現代的な観測理論の第一原理は,任意の測定装置のモデルが, 測定相互作用を量子力学で記述できるようなあるモデルと統計的同値だということであり, これは,きわめて一般的な公理から証明できる。 このことから,測定相互作用の分析に際して,いわゆる観測問題を回避することができる。 このサブゼミでは,このような新しいパラダイムに基づく観測理論によって, 測定の限界に関するハイゼンベルクの不確定性原理を解明することを目的とする。 主な内容は,以下の通りである。

1. 観測理論
1.1. 一般測定の統計
1.2. 測定過程とインストルメント
1.3. 可換性と同時測定可能性
1.4. 量子完全相関
2. 不確定性原理
2.1. 測定誤差
2.3. 測定による擾乱
2.4. 測定に関する普遍的不確定性原理
2.5. 量子モニタリングの標準量子限界
3. 保存法則と量子状態制御の限界
3.1. Wigner-Araki-Yanase の定理
3.2. 測定の保存則導来型量子限界の定量化公式
3.3. 保存則と量子計算におけるデコヒーレンス

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