複雑ネットワークの物理
静岡大学 工学部 システム工学科 守田 智

従来、物理学の分野で用いられてきたネットワークと言えば、 正方格子のような規則正しいものが主であった。 一方、数学の分野において不規則なネットワークとしてランダムグラフという形式で研究が行われていた。 また、社会科学の分野における人間関係のネットワークに関する研究は小規模なネットワークに限られていた。 このような状況に対するブレイクスルーは、 1998年のワッツ、ストロガッツのスモールワールドネットワークに関する論文と 1999年のバラバシ、アルバートのスケールフリーネットワークに関する論文によって与えられた。 以後、大規模なネットワークの複雑な構造を物理学的視点で捉える研究が盛んに行われるようになった。

ここでネットワークとは、なんらかのモノが多数ありその間に「ツナガリ」が定義されているもの一般を指す。 これらの研究によって生物系のネットワーク、社会関係のネットワーク、 人工物のネットワークなどの現実世界のネットワークの多くが同じ特性を共有することが知られるようになった。 特によく知られている特性としては、 短い平均距離と高いクラスター指数を伴う「スモールワールド性」と結合度分布が冪則に従うという「スケールフリー性」とがある。このような 特性を持つネットワークは、しばしば複雑ネットワークと呼ばれている。

複雑ネットワークのモデルは数多く提案されており、 ネットワーク構造とシステムの動態との関係についても明らかになりつつある。 本サブゼミでは、この分野での研究動向を概観するとともに講演者の研究成果を紹介したい。

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